「なぁ、舞台見に行かん。」友達にそう誘われたのは、都会に出て2年が経った頃です。舞台=ミュージカルみたいなイメージのあった私は、客席でじっとしている自信がなかったので一度は断りました。けれど、行ってみようかなぁと再び考えなおしたのは、その舞台に高校時代の友達が出ていると聞いたからです。友達と言っても、私は商業科だったので普通科にいた彼女とは同じクラスになったことはありません。たまたま共通の友人がいたので、彼女をはさんで何度か遊びに行ったり話しをした程度です。高校卒業後はまったく連絡もとってなかったので、懐かしい気持ちと久しぶりに話しが出来るかもという気持ちで、彼女の舞台を見に行くことに決めたのです。
彼女が入っている劇団は、小規模なものらしく舞台を行う場所も駅からは少し離れた場所にありました。私も初めて行く地域だったので、時間より一時間早く向かいます。案の定、道に迷い劇場についたのは開演ぎりぎり。あわてて友達と席に座りました。小さな劇場なので隣との距離も近く、周りを見るとちらほらと空いてる席もありました。微妙なのかなぁと思っている最中、パッと照明が消え舞台が始まりました。舞台のストーリーは今ではなんとなくしか思い出せません。
でも、舞台の上で一生懸命に演じる人たち、暗闇の中で動き回る裏方の人たちを見ていると舞台っていいなぁって思ったのを覚えています。舞台が終わり、劇団の方が全員で頭を下げたとき劇場内には大きな拍手が響きました。そして、外に出ると劇団員の人がお客さん一人ひとりに「ありがとうございます」って笑顔で握手をしているのです。その中には、友達の姿もありました。舞台の上ではわき役でしたが、お客さんに笑顔であいさつをしている友達に女優のオーラみたいなものが見えた気がしました。